(写真:北海道「羊蹄山」
農業法人には、稲作のような土地利用型の農業をはじめ、施設園芸、畜産など、農業を営む法人の総称で、会社法に基づく株式会社や合名会社、農業協同組合法に基づく農事組合法人に大別されています。
これまでの農業は個人が営むことが一般的でしたが、法人が農業を経営すること珍しくなくなり、近年、増加傾向にあります。
農業法人化には、以下のようなメリットもありますが、デメリットな面もありますので、法人化する場合には、しっかりとした設立目的や将来の展望を持ち、確実に実行できる無理のない事業計画を設計することが重要です。
農業法人化によるメリットは、経営、地域農業及び税制上のメリットが以下のとおりあります。
(農林水産省ホームページから引用)
農業法人化によるメリット
・経営責任に対する自覚を促し、経営者としての意識改革を促進
・家計と経営が分離され、経営管理が徹底(ドンブリ勘定からの脱却)
・財務諸表の作成義務化により、金融機関や取引先からの信用が増す。
・幅広い人材(従業員)の確保により、経営の多角化など事業展開の可能性が広がり、経営の発展が期待できる。
・社会保険、労働保険の適用による従事者の福利の増進
・労働時間等の就業規則の整備、給与制の実施等による就業条件の明確化
・農家の後継者でなくても、構成員、従業員の中から意欲ある有能な後継者を確保することが可能
農業法人に就農することにより、初期負担なく経営能力、農業技術を習得
・役員報酬を給与所得とすることによる節税
(役員報酬は法人税において損金算入が可能。また、所得税において役員が受け取った報酬は給与所得控除の対象となる。)
・欠損金の10年間繰越控除(青色申告をしている個人事業主は3年間)
参考:青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除(国税庁ホームページ)
農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)の貸付限度額
・個人3億円(複数部門経営は6億円)
・法人10億円(民間金融機関との協調融資の状況に応じ30億円)
農業法人化によるデメリットとしては、以下のようなものがあります。
上記のようなメリットを享受したいのであれば、法人として企業会計規則に従った複雑な会計処理を行う必要があり、会計士や税理士に委託した場合には経費負担となります。
また、従業員の社会保険の加入手続きや経費の負担が発生します。
・法人の場合、利益がなくても最低限の地方税負担
・企業会計規則による会計事務
・税務申告や会計事務を税理士に依頼した場合、経費がかかる。
・農地の移転が課税対象となるケースがある。
・農地を売却した場合、譲渡所得税の課税
・農地を現物出資した場合、評価額に対し譲渡所得税が課税
(※農地貸付を行った場合には、譲渡所得税の課税はありません。)
・健康保険や厚生年金などの社会保険への加入義務が発生し、法人が半額を負担
・会議、打合わせに係る経費負担
・法人を解散・廃止する場合の法人財産を精算
・解散・廃止の手続きは、専門家の指導が必要となり経費を負担
・精算が完了するまで2カ月の期間を要する。
農業法人を株式会社や合名会社として設立する場合は、基本的に一般的な会社設立の手続きと同じで以下のとおりとなります。
・ 基本的事項を決議し、決定事項は発起人会議事録(発起人が一人の場合は発起人決定書)に記載し、発起人全員が捺印。
・ 目的、商号、本店所在地、出資財産の価額又は最低額、発起人の氏名又は名称及び住所といった絶対的記載事項や発行可能株式総数等の相対的記載事項を規定
※ 農地を取得する株式会社の場合は、株式の譲渡制限の定めが必要
・公証人による定款の認証
・発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、当該設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又は金銭以外の財産の全部を給付
・設立時取締役は、出資の履行の完了や設立手続の法令又は定款の違反の有無等を調査
・取締役会設置会社である場合は、代表取締役を選定(設立時取締役の過半数の決定)
・登記簿謄本と代表取締役等の印鑑証明を取得し、必要な書類と共に諸官庁へと届出
税務署、都道府県税事務所、市町村役場(税務・国民年金)、労働基準監督署(雇用保険、労災保険)、社会保険事務所(健康保険、厚生年金)など
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